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2005年11月20日 (日)

NOMOクラブと若者の夢。

11月18日に行われた大学生・社会人を対象にしたプロ野球ドラフト会議で、NOMOベースボールクラブに所属する柳田殖生(しげお)内野手(23)が中日の5順目で指名されました。野茂英雄投手が設立したNOMOベースボールクラブからは、初めてプロ入り選手が誕生することになります。

柳田は京都・福知山商(現福知山成美)で3年夏に甲子園へ出場、社会人のデュプロに進むも2年で退部、2003年にNOMOクラブの第1回トライアウトで合格し、今年、都市対抗野球に初出場、全日本クラブ選手権優勝の原動力になりました。

そんな柳田は、決して恵まれた環境の中で野球を続けてきたわけではありませんでした。月収15万円の建築現場の仕事が終わった後、毎晩、練習に参加するという日々を送っていました。このNOMOクラブは、柳田のように、10万そこそこの月収を稼ぎながらクラブで野球を続ける選手がほとんどです。家族を養っている選手もいます。

彼らはグラウンドの上で毎日、プロ野球選手になるという夢を持って、ボールを追い続けています。指名会見で柳田は、「野茂さんの『夢をあきらめるな』という言葉を信じてやってきた」と言いました。

本気でプロを目指す野球選手は、高校を出たら、どこへ行くのでしょうか。今までは、主に大学と社会人という、2つの選択肢がありました。しかし、その有力な進路の1つ、社会人チームは、折からの不況のあおりを受けて、次々と廃部に追い込まれています。1963年には237もの社会人チームが存在し、1998年でも142チームが加盟していましたが、2005年9月現在で、その数は83にまで激減しました。

野茂が87~89年まで所属していた新日鉄堺(大阪府)も、94年に廃部の憂き目に遭いました。

野茂にとって、社会人野球の選手として過ごした3年間は、極めて大切な日々でした。「社会人になった頃は、何もできないダメ人間でした」と語っている通り、野茂は入社当初は、あらゆる面で未熟な選手でした。高校時代から、投手として桁違いな才能の原石を持っていながら、練習についていけず、「もうダメです。やめたいです」と先輩にこぼすこともありました。しかし、野茂は挫折を乗り越え、この3年間で体力的、技術的、そして精神的に著しい成長を遂げ、ソウル・オリンピックで好投し、プロ(近鉄)入りを果たしました。最大の武器・フォークボールを覚えたのも、社会人時代です。

自身の原点である社会人野球が、危機に立たされている現状を憂慮した野茂は、プロを目指す若者に野球を続ける場を与えるため、2003年にNOMOクラブを設立しました。

今、このようなクラブチームの数は増え続けています。1998年に201だったクラブチームは、現在、その数を251まで増やしています。この1年でも、実に20ものクラブが新規に加盟しています。

給料を貰って野球を続けることが、いちばん望ましいというのは言うまでもないでしょう。しかし、その機会は著しく減り続けています。一方で、プロを目指したい、野球がしたいという選手は減っていません。社会人という受け皿がカバーする範囲を狭めた分、クラブチームがその溢れた人材を受け入れている、という流れができています。今話題の茨城ゴールデンゴールズ(萩本欽一氏が経営・監督を務める)もそうしたクラブチームの1つですし、元中日の谷沢健一氏や歌手の山本譲二氏もクラブチームを持っています。四国アイランドリーグはプロを目指す選手たちの新しい闘いの場となっていますし、アメリカ・独立リーグには江本孟紀氏が経営にかかわる、日本人選手だけで構成されたサムライ・ベアーズ(元巨人のウォーレン・クロマティが監督)というチームがあります。さらに江本氏は先日、そのサムライ・ベアーズで活躍し、帰国した選手を再編成したチームを立ち上げ、監督に就任しました。このように、アマチュア球界を取り巻く現状は大きく変わりつつあります。

かつて野茂が追い続けて実現した夢を、今、柳田が実現しました。野茂が築いた道筋を辿って、新たなプロ選手が誕生することは、NOMOクラブの選手たちの夢であり、ほかならぬ野茂の夢でした。日米通算200勝を挙げたときでさえ、笑わなかった野茂が、都市対抗出場を決めたNOMOクラブについて質問されたときには、記者に対して笑顔を見せたそうです。そのくらい、野茂は夢を追う後輩たちのことを大切に思っているのです。これから先、柳田はどんな選手に成長していくのでしょうか。

野茂が社会人時代に、夢を追って汗を流した新日鉄堺のグラウンドは今、使用料を払いながら、野茂と同じ志を持つNOMOクラブが使っています。

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