数々の夢を与えてきたピッチ上の魔法使いは7月9日、ベルリンでその輝きを消す。
現地時間25日(以下現地時間)、レアル・マドリー(スペイン)に所属するフランス代表MFジネディーヌ・ジダン(33)が、2006年W杯後に現役を退くことを発表した。ロイター通信が報じている。
「(引退を)決断したよ。これが最後の答えだ」、仏テレビ局『カナル・プリュス』のインタビューにそう答えたジダン。「少し前から考えていた。自分の精神を自由にしたかった。何度も考え直したよ」「シーズン終了を2週間後に控えてこのような発表をするのは変な気分だけど、よく考えて決めたことだし、W杯を前に発表するべきだと思った」と続けた。
所属するマドリーとの契約が1年残っている段階での引退の理由については、「身体に聞いてみて、もう1年は続けられないと思った。ワールドカップの後、3週間のバカンスを終えてから『引退する。別の選手が必要だと思う』とクラブに伝えるのは無理があると思う」と、現役をあと1年続行できるようなフィジカル状態ではないことを吐露。
マドリーでのパフォーマンスについて、「もう3シーズンも結果が出ていない。そういう時には疑問がわいてくる。今まで自分がしてきた以上のこと、若い頃のようなプレーができないのはよく分かっている。今の年齢ではなおさら難しくなってくる。今年のようなシーズンはまた繰り返したくはない」と、自分が思い描くプレーを披露できなくなった苦悩を語った。
カンヌ、ボルドー(ともにフランス)でのプレーを経て、1996年にユヴェントス(イタリア)に移籍。1998年に地元開催のW杯を制覇、自身は決勝でヘディングによる2ゴールを決める(5試合2得点)。同年バロンドール(欧州年間最優秀選手)を受賞。EURO2000でも優勝を経験(6試合2得点)。99-00シーズンのセリエA最終節、沼地と化したペルージャのグラウンドで敗戦を喫し、ラツィオにスクデットをさらわれたた後、海のある場所に住みたいという妻の希望もあって新天地への移籍を決意。01年にサッカーの歴史上で最も高額な6600万ユーロ(当時約80億円)という移籍金でレアル・マドリーに加入すると、同シーズンにはチャンピオンズリーグのタイトルも手中に収めた。レヴァークーゼンとの決勝で決めた、ロベルト・カルロスの上げた適当なクロスをダイレクトで叩いた美しい左足ボレーは、今でも語り草となっている。02-03シーズンにはリーガ・エスパニョーラを制覇。EURO2004のイングランド戦では、後半ロスタイムに、華麗な弾道を描いた直接FKを含む2得点を挙げてチームを窮地から救った。いったんは代表から引退するも、ドイツW杯予選で苦戦するレ・ブルー(フランス代表の愛称)を見かねて、ジダンと同じ髪型をした兄・ノルディーヌから「神のお告げ」を授かって代表に復帰。4試合に出場し、予選グループD1位突破に貢献する。今年1月には自身初のハットトリックを達成。2月には「ワールドサッカーオウンゴール」のインタビューに答える。
03年、フランスの英雄ミシェル・プラティニ以来となる3度目のFIFA年間最優秀選手に輝くなど、眩いばかりの栄光(と後光)に包まれた現役生活。自身最後の一大イベントとなる06年W杯に向けてコメントしたジダンは、「最後のゴール。ほかに望むものなど何もない」と静かなる闘志を燃やしていた。
なお、引退会見は26日にマドリーで行なわれる。
この発表に対するサッカー界の反応は以下の通り。
「ジダンは最もビッグな選手。引退は彼だけが決めることができる。ここ数シーズンというもの、ジダンはユベントス、レアル・マドリー、そしてフランス代表で最も高いレベルのプレーをしてきた。いつまでもそんなプレーを3日おきに続けることなんて無理なこと」(スキンヘッドのフランス代表GK、ファビアン・バルテズ)
「ジダンが素晴らしい結果を残して引退できるよう、みんなで一生懸命頑張る。そのくらいやるのは当然だ。普通の選手とはわけが違う。僕らにとって、ジダンがいなくなることは本当に寂しい。サッカーを愛するすべての人々にとっても同じだろう」(特殊な形状の頭蓋骨を誇るフランス代表FW、本当はジダンと仲が悪いティエリ・アンリ)
「ジダンに関してはたくさんの輝かしい思い出がある。謙虚で知的な、本当に素晴らしい人物だ。ここ20年で最も偉大な才能の持ち主だろう。彼のコーチだったことを誇りに思う」
(ジダンのユヴェントス時代の監督で現イタリア代表監督、マルチェッロ・リッピ氏)
「ひとつの輝かしい時代の終わりだ。彼がサッカーにもたらしてくれたすべてのことを思うと、彼の引退は残念だ」(次期日本代表監督候補筆頭、アーセナル監督、アーセン・ヴェンゲル氏)
「ジズーのように、長年にわたって見る者にため息をつかせるような最高のテクニックを披露し、チームに数多くの勝利をもたらし、なおかつ人格者でもあるサッカー選手は、今後、二度と現れないかもしれない。若い選手で言えば、ルーニーやイブラヒモヴィッチ、クリスティアーノ・ロナウド、アドリアーノらの素行の悪さを見ていると、ジダンのような真のカンピオーネにはなり得ない気がする。しかし、ジズーのより素晴らしい点は他にもある。あの髪型だ。世界中のはげ、抜け毛に悩む人たちに、ジズーは絶大なる勇気と希望を与えた。『あんなはげ野郎が世界最高のサッカー選手なんだ。私も同じはげとして、ジズーのように成功できる可能性に賭けてみよう』と。ジズー、W杯が終わったらしばらくはサッカーのことは忘れて、ゆっくり休んでくれ。そして、心身ともにリラックスできたら、再び私たちの前に姿を表してくれ。ただし、その際には、増毛に成功したジズーの頭部が見たい。」(ライト兄弟)
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