秀さん!!(ヤンキース松井秀喜選手)
平成21年度MLBワールド・シリーズ最高殊勲選手!!
「10・8」の年以来、ずっと人間・秀さんの生き様を追ってきた私ですが、
こんなにすばらしい日が訪れるなんて……
聖地ヤンキー・スタヂアムを埋め尽くした歓喜のニューヨーカー達。
秀さんも、チームメイトも、みんな笑顔。
だけど、テレビ画面の向こうに映るその喜ばしい様子が、
涙で滲んでよく見えません。
「裏切り者と思われるかもしれませんけど」「命をかけて」選んだメジャー・リーグの舞台。
1年目はメジャーの投手の手元で動くボールに順応しきれず、ホルヘ・スタインブレナー・オーナー(当時)に、
「ステーキを注文したらハンバーガーが運ばれてきた」(ハンバーガー事件)
と酷評されながらも、勝負どころで結果を出す「クラッチ・ヒッター」ぶりを評価され、ワールド・シリーズでは第5戦以降、4番に抜擢されました。
惜しくもワールド・チャンピオンには手が届かなかったものの、近いうちにきっともう一度、「ゴジ・ジャンプ」(推定跳躍高2メートル)を見せてくれるだろうという期待を持つことができました。
平成16、17年と、世界一には届かないものの、結果を残して順調にヤ軍での地位を高めた秀さんは、「4年5200万ドル」という大型契約を勝ち取りました。
しかし……ここから秀さん受難の日々が始まりました。
多くの心無い非難を浴びた「ワールド・ベースボール・クラシック出場辞退」の決断を経て迎えた、悲劇。平成18年の「5・11」。
考えたこともなかった、「秀さんのいない空虚な日々」が、突然訪れました。
平成19年は右膝痛で成績を落とし、シーズン・オフに手術。
春先に結婚して心機一転の平成20年は、古傷の左膝が悲鳴を上げ、またも手術。
メジャー1年目以来、ワールド・シリーズの舞台から遠ざかったまま、気がつけば4年契約の最終年を迎えました。
守備につけない、走れない、パワーも落ちた秀さんに、メディアやファンから容赦なく「不要論」が唱えられました。
今シーズンの開幕直後はコンディションが上がらず、相手チームの先発投手が左腕のときは「休養」の名目で先発を外される日々。
最終的に28本塁打、90打点とチームの中軸として相応しい成績を残しながら、レギュラー・シーズン中は結局最後まで確固たる信頼を得られなかった感がありました。
チーム・メイトの奮闘によって、契約最終年のシーズンに、ヤ軍は秀さんが待望したワールド・シリーズの舞台に戻ってきました。
その第2戦で、豪腕ペドロ・マルティネスから放った決勝の本塁打が、秀さんを取り巻く状況を一変させました。
第3戦以降は、指名打者制が使えないフィリーズのホーム・ゲーム。秀さんは当然、代打での出番を待つものと思われていました。
しかし、ペドロからの値千金の一発をきっかけに、予想だにしなかったこんな論調が展開されました。
「こんなに勝負強い秀さんを代打の1打席で終わらせていいのか。リスクを負ってでも、守備に着かせて4打席立つべきではないか」と。
秀さんはあのホームランで、これまでの7年間に積み上げてきた信頼を、周囲に思い起こさせたのです。
結局、フィリーズ主催の3試合で先発することはなかったものの、代打でも3の2、1本塁打と結果を出した秀さんが、ヤンキー・スタジアムでの試合で先発に戻ってくるに際して、メディアが大騒ぎしました。
「秀さんをDHで使えるヤ軍が断然有利。待ってました秀さん!」と。
そして、秀さんは5万超の大観衆の前で最高のパフォーマンスを見せました。
第3打席、2点適時二塁打を放って誇らしげに立つ秀さんの姿に、興奮したニューヨーカー達は、ヤ軍の勝利を確信し、大合唱を始めました。
「MVP!MVP!MVP!」
秀さんは、渡米後の7年間、ずっと追い求めていた最高のタイトルを、自身のバットで力強くたぐり寄せました。
「僕はヤンキースが好きだし、チームメイトが好きだし、ニューヨークが好きだし、ここのファンが大好きです」。
秀さんは万感の思いをこめて、世界中に向けて胸の内を明かしました。
その言葉と姿は、秀さんがこの世に生を受けた35年前の東京で、恩師が叫んだシーンに、驚くほどよく似ていました。
「我が巨人軍は永久に不滅です」。
秀さんのモチベーションは、個人の成績ではなく、チームの勝利を目指すことにあったことを、再確認しました。
「10・8」の年以来、ずっと人間・秀さんの生き様を追ってきた私ですが、
こんなにすばらしい日が訪れるなんて……
夢のようです。
秀さんをずっと信じてきたはずなのに、信じられない心地です。
今年の春先に、手術明けの影響で調子が上がらなかったときは、「引退」という最悪のシナリオを本気で危惧していました。
もしそうなったとしても、目を逸らさずに秀さんの勇姿を目に焼き付けたい。
11月になって、私の目に、涙とともに焼きついたのは、歓喜の輪の中心に立つ秀さんでした。
世界最高のナイス・ガイが綴る物語は、壮大なクライマックスを刻みました。
そして、また新たなページが重なっていきます。
とりあえず次のページは、「2世誕生」というおめでたい出来事であればいいですね。
Thanks! 秀さん!!
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