6月9日に開幕したFIFAワールドカップは、連日、文字通りワールドクラスの好ゲームが繰り広げられ、7月9日、イタリアがフランスを下して4度目の優勝を飾り、この熱狂の祭典は幕を降ろしました。
本誌の技術顧問(テクニカル・アドバイザー)を務めるアルシンド氏(元鹿島アントラーズ)に、今大会を総括してもらいました。
ワールドサッカーオウンゴール(以下WSO):やあ、アルシンド。いつ見ても面白い(かつ悲哀な)髪形をしているね。
アルシンド(以下A):そんなの、今に始まったことじゃないだろう。君たちはもうとっくの昔に僕の髪型を笑うことに飽きたのかと思っていたよ。
WSO:トト・スキラッチ(元イタリア代表、ジュビロ磐田にも在籍)に髪が生えたっていう噂は耳にしたことがある?
A:いや、そいつは初耳だな。ぜひ今度、彼のヅラを拝見したいものだ。
WSO:君には増毛の遺志はないのかい?
A:冗談じゃないよ。僕が増毛なんかしたら、自分の存在意義を否定しているみたいなものじゃないか。ところで、そろそろワールドカップの話をしないか?
WSO:そうだね、まだまだ君の増毛計画について話し続けたいところだけど、その話は今度、リーブ21のテレビCMで和田アキ子さんとすればいいからね。まず、君の親友ジーコが率いる日本代表について聞こうか。今大会の日本は、選手個々のパフォーマンスやサッカーの質のみならず、ファイティング・スピリットに関しても参加32カ国中最低だったと、識者の中では意見が一致している。君は日本の戦いぶりについてどう思った?
A:最悪。その一言に尽きるね。日本には、ワールドカップという世界最高の舞台に立つ資格はなかったと思うよ。3試合で1得点7失点……「グループリーグは2位で通過できそうだ」なんてほざいていた身の程知らずはいったいどこの誰だい?まあ、アジアのチームの評判は、今大会で地に墜ちたと言っていいんじゃないかな。不当に多すぎるアジア枠4.5のせいで、ウルグアイやカメルーン、デンマーク、ブルガリア、そしてボビー・オロゴン擁するナイジェリアといった実力国が出られなかったことは、ワールドカップのクオリティの低下という重大な損失になったね。
WSO:ファイティング・スピリットがなかった、ということは、サッカーを知る誰もが感じたことだよね。じゃあ、日本の選手個人を槍玉に挙げるとしたら誰?
A:高原。あの奇妙な髪型は、世界中のサッカーファンを不快な気持ちにさせた。髪型で目立つなら、1つか2つのゴールを決めれば格好がつくんだろうけど。僕は彼が出場した2試合で、彼がボールに触ったシーンを見た記憶がないね。あの「スシ・ボンバー」はプレーに関しては、全くノーインパクトだった。あの変なモヒカン――僕が一生できっこない髪型だ――は、彼のワールドカップに対する意気込みの軽さを表していただろうね。
WSO:あれ?君は今、高原は2試合に出場したって言ったけど、確か彼は3試合でピッチに立っていた気がするけど?
A:いや、スシが出たのはオーストラリア戦とクロアチア戦の2試合だけだろう?
WSO:まさか君はブラジル戦でのスシの「伝説の6分間」を忘れたわけじゃないだろう?
A:ブラジル戦か。あの試合の日本はベンチ入りメンバー22人、交代枠2人で戦っていた気がするね。6分間って言うけど、そのうち4分間はピッチの外で治療を受けていたよ。コロンビアの選手がワールドカップであんなことをしたら、間違いなく母国で射殺されるね。
WSO:要は高原死ねってことだね。
A:まあ、日本の敗因はそれが全てじゃないにせよ、ね。何が「サムライ・ブルー」だ。選手たちが体現できっこないキャッチコピーをつけるサッカー協会も責任が重いね。まだ渡辺謙が出ていた方が戦う姿勢を示せたんじゃないかな。
WSO:ジーコの仕事ぶりについてはどう評価しているかな?
A:コインブラは世代交代を怠った。トルシエが育てた選手を引き継いでドイツに来ただけだ。次の代表監督オシムに要求される仕事の量は、半端じゃないね。「黄金世代」?笑わせるんじゃないよ。はっきり言って、コインブラは日本サッカーが世界レベルに達するために任された4年間を棒に振っただけだ。戦術もビジョンもなにもない。役に立たない選手の代表キャップ数と年齢だけが重ねられた。フランス代表は長年にわたって代表でプレーしている選手が大半を占めることから「ベテラン集団」と呼ばれたけど、日本だって同じだ。ただ、フランスと違って日本は低レベルなアジアカップ以外に、何も勝ち取っていないということ、そしてジダンやアンリのようなすばらしい選手がいなかったということだ。4年間でコインブラの頭はすっかり寂しくなった。その心労の見返りが「1分け2敗」だ。コインブラの抜け毛は報われなかった。W杯のアジア枠が減らされたら、日本はまた「ドーハの悲劇」を味わうことになるかもしれないね。ドイツに23人の中で、4年後に残っている選手は誰がいるだろう?小野か巻くらいのものだ。日本最高のハゲDF闘莉王を呼ばなかったのも大失敗だ。こんなことなら、フィールドプレイヤーの中で1人だけ出番のなかった遠藤じゃなくて、流れを変える能力を持つ、若い松井を招集しておくべきだった。トルコで行進曲歌いながら舌噛んで死ねジーコ。
WSO:ずいぶん批判的だね。それじゃあ、話題を変えよう。君の母国ブラジルはひどいサッカーであっさり準々決勝敗退した。敗因はなにかな?
A:フランス戦では、あのハゲた5番のボランチがケガで使えなかったことが痛かったね。あいつ、名前なんて言うんだっけ?
WSO:エメルソン。
A:ああ、そうそう、問題児エメルソン。彼とゼ・ロベルトだけが弛みきったブラジルのサッカーを引き締めていただけに、エメの離脱は痛かったね。浦和の失速の呼び水になってしまった。
WSO:「黄金のカルテット」は不発に終わった。
A:フランス戦の試合終了間際に絶好の位置からのフリーキックを外したロナウジーニョが見せた引きつった笑顔が、セレソンの噛み合わないサッカーを象徴していたね。彼らは代表でもクラブでも、すでに数々のタイトルを獲っているから、モチベーションが低かったのかもしれない。若いロビーニョをもっとたくさん使っていれば攻撃が活性化したと思うんだけど。フランス戦の後半でようやくカフーをシシーニョに代えた采配に集約されるように、パレイラ監督は選手に競争という刺激を与えられていなかった気がするね。そういえば、コインブラのチームにも「黄金の中盤」なるものが存在していなかったっけ?
WSO:さあ?日本に「黄金の中盤」だって?冗談だろう?
A:でも、前回大会に比べると、日本の「10番」の選手のクオリティは上がったよね。フランス大会は名波(磐田)、ドイツ大会はまったくの期待外れだったけど中村(横浜F・マリノス)……いずれも左利きのテクニシャンだ。もし日本がアメリカ大会に出ていたらラモスが10番を背負っていただろう。じゃあ、日韓大会は……中山だ。笑わせるよ。トルシエはカモフラージュでも狙っていたのかな?対戦相手は「日本は10番の選手をベンチに置いている。選手層が厚いぞ」と考えるだろうからね。
WSO:ゴンにはぜひドイツ大会に出てほしかったよね。それじゃあ話題を変えて、アルシンドに選んでもらおう。「今大会のベスト・オウンゴール」は?
A:そいつは簡単な質問だな。USA戦のザッカルド(イタリア)だ。右サイドからのフリーキックのクロスボールを右足でクリアしようとして空振り、軸足の左足にボールが当たって、ゴールネットを揺らす……。僕はリプレイ映像を見るまで、何が起こったのか理解できなかったよ。笑撃的なオウンゴールだったね。
他には、3位決定戦のペティート(ポルトガル)、ベッカムのFKをクリアし損なったガマーラ(パラグアイ)が印象に残ったね。
WSO:それじゃあ、「今大会のワースト・ゴール」は?
A:最もがっかりしたゴールか。それも簡単な質問だね。オーストラリア戦の中村(日本)だ。あんなものはゴールのうちに入らないよ。柳沢のキーパーチャージが見逃されただけだからね。審判の重大なミスジャッジだった。試合後にヒディンクは自身満々に語っていたよ。「レフェリーは我々の逆転勝ちに救われたね。もし日本が引き分けか勝っていたら、あのミスジャッジが大問題になっていただろう」ってね。いっそ、柳沢のゴールと記録しておけば良かったんだよ。一応彼は、鹿島OBである僕の後輩だからね。
WSO:要は「中村も死ね」ってことだね。じゃあ次は、「今大会、サプライズを起こした選手」を何人か挙げてよ。
A:今大会はニューフェイスの活躍に乏しい大会だった。メッシやルーニー、ロビーニョ、アデバヨール、イブラヒモヴィッチといった期待の若手選手がいまひとつインパクトを残せないままドイツを去ってしまったからね。ただその中でも、僕たちを楽しませてくれた選手は何人か現れた。まず、スペインのマリアーノ・ペルニア。
←写真右の人物がペルニア
←3番がペルニア
このアルゼンチン出身の左サイドバックは、ダイナミックな攻撃参加と左足の強烈なクロス、シュートそして著しく後退した髪型で僕の目に止まったね。スイスのリュドヴィク・マニャンもよかった。ポジションもプレースタイルも髪型もペルニアとだいたい同じだ。
攻撃の選手は、イタリアのジラルディーノ(24)。プレーでは1得点とあまりぱっとしなかったけど、彼が前髪の後退を印象付けたことは収穫だったね。イケメンなのにもったいない。

そして、何といってもオランダのアリエン・ロッベンは素晴らしかった。ファン・ニステルローイやファン・デル・ファールトといった軸となるべき選手たちが不振だったオランダの中にあって、ロッベンの活きのいいドリブル突破はオランダの推進力になっていたね。まあ、彼の毛髪は活きを失っているけど。
←その髪型にイエローカード!
そうそう、ロッベンはセルビア・モンテネグロ戦でゴールを決めた後、両手で投げキッスを3回飛ばしていただろう。全米がそのシーンに吹いたね。まあ、そんなところだ。ポルトガルのクリスティアーノ・ロナウドはレイプをして以来、さっぱりだしね。
WSO:若手は文字通り「不毛」の大会だったってわけか。でも、ベテラン選手は活躍が目立ったね。
A:そうそう、それは喜ばしい限りだったよ。僕はてっきり、ジダンは頭髪の亡失に比例してプレーの切れを失ったのかと思っていた。でも、そんな公式はジダンには当てはまらなかったみたいだね。「輝き」は全盛期よりも増していたと思うよ。アレックス・デル・ピエロは、前髪の後退をごまかすため、そしてユヴェントスの不正疑惑に対する懺悔のために、坊主にした。

そういえば同じユヴェントスのザンブロッタ、カンナヴァーロ(兄)、トレゼゲも坊主だ。ブラジルのエメルソンもはげているし、カモラネージは決勝戦の後、ポニーテールを切り落とした。ユーヴェにはかつて、ジダンも在籍していた。みんなで「悪いことをしてごめんなさい」って謝っているみたいだね。でも、ジジ・ブッフォンは髪型を変えていない。彼はイタリアリーグのサッカー賭博に関わっていた疑惑があったよね。彼がいちばん悪いことをしていたんだから、きっちりとけじめをつけてほしかったよね。マテラッツィみたいに。
WSO:今、君は話の流れの中で多くのハゲ選手の名前を挙げてくれた。じゃあ、そろそろ聞いてもいいかな?「今大会のベスト・オブ・ハゲプレイヤー」は誰?
A:最後のPKを失敗して「ああ、神様、僕になんと残酷な仕打ちをするんですか?著しい頭髪の後退のみならず、PKも止められるなんて」と泣き叫んだエステバン・カンビアッソ(アルゼンチン)だ。彼はセルビア・モンテネグロ戦でパスを20数本つないで決めたビューティフルゴールのあと、チームメイトから主に頭をもみくちゃにされた後、髪の毛を整えていた。最高のパフォーマンスだ。彼以外に「ワールドサッカーオウンゴール」のワールドカップ総括号の表紙を飾れる選手は見当たらないね。
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